ピッキングシステムとは?|種類・メリット・選び方のポイント | 株式会社タカハタ電子
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ピッキングシステムとは?|種類・メリット・選び方のポイント

公開日​:

2025年12月15日

倉庫や物流センターでは、注文ごとに商品を取り出す「ピッキング作業」が、その作業効率や出荷品質を大きく左右します。近年は取り扱う商品の種類が増え、EC需要の拡大や人手不足によって、紙のリストや作業者の経験だけではミスや手戻りが発生しやすくなっています。

 

こうした課題に対応する仕組みとして導入が進んでいるのがピッキングシステムです。ランプ表示によるデジタルピッキング、音声ガイド、タブレット表示など、さまざまなシステムが広がり、現場の標準化と効率化に大きく貢献しています。


本記事では、ピッキング作業の基本方式、主要なピッキングシステムの種類、導入メリット・デメリット、自社に合ったシステムの選び方までを総合的に紹介します。


目次



1.ピッキングシステムとは?


ピッキングシステムとは、倉庫や物流センターで行われる「ピッキング作業(商品を注文ごとに取り出す工程)」を効率化・正確化するための仕組みです。

 

従来は紙のリストや作業者の経験に頼って行われていたため、作業者によって精度や速度に差が出たり、数量の取り違えが発生したりするケースが少なくありませんでした。この背景には、次のような要因があります。


  • 商品を探すのに時間がかかる

  • 数量の取り違えなどヒューマンエラーが発生する

  • 作業者の習熟度によって品質がばらつく


こうした問題を解消する手段として、ピッキングシステムの導入が進んでいます。ランプ表示や音声ガイド、タブレット端末などのデジタル技術を用いることで、誰でも正確かつスムーズに作業できる環境を整えられます。

 

また、作業データの可視化や在庫のリアルタイム更新が可能になり、現場全体の生産性向上に寄与します。

人手不足や多品種少量出荷といった課題が深刻化する今、ピッキングシステムは物流の生産性と品質を維持するうえで欠かせない存在となっています。



2.ピッキング作業の主な方式


ピッキングシステムを選ぶ前に、現場で採用している「作業方式」を理解しておくことが重要です。同じピッキング作業でも、注文特性や商品構成によって適した方式が異なります。

 

以下は代表的な5つの方式です。



2-1 シングルピッキング方式

シングルピッキング方式は、1つの注文ごとに商品を取り出す基本的な方法です。多品種少量の出荷が多い現場で使われやすく、初心者でも理解しやすい運用ができます。

 

ただし、注文数が多いと歩行距離が増えやすく、作業負荷が大きくなる場合があります。


2-2 トータルピッキング方式

トータルピッキング方式は、複数の注文をまとめて「合計数量」を一度にピッキングする方法です。同じ商品がまとまって出荷される現場では、大幅な効率化が見込めます。


ピッキング後に注文ごとに仕分けを行う工程が必要になるため、その 後工程を含めた運用設計が欠かせません。


2-3 ゾーンピッキング方式

ゾーンピッキング方式は、倉庫を複数のエリアに分け、それぞれに担当者を配置する方法です。広い倉庫や棚数が多い現場で移動距離を大きく削減でき、作業の分担が明確になります。


担当エリアに集中できるため、新人が習熟しやすい点も特徴です。


2-4 バッチピッキング方式

バッチピッキング方式は、複数の注文をまとめて一度に処理する方式です。EC倉庫のように小口注文が多い現場で効果があります。一度にまとめて処理することで、作業が集中しやすく効率的です。


ただし情報量が多いため、ピッキングシステムとの併用がより効果的です。


2-5 ウェーブピッキング方式

ウェーブピッキング方式は、出荷時間帯に合わせて作業を複数の「波(ウェーブ)」に分けて進める方法です。納品時間が厳しい現場や、繁忙期に大量出荷が発生する倉庫で力を発揮します。

 

スケジュール管理の精度が求められますが、出荷遅延を防ぐうえで有効な方式です。



3.ピッキングシステムの主な種類


ピッキングシステムにはさまざまなタイプがあり、導入する仕組みによって作業方法や得意とする現場が大きく変わります。

 

ここでは主要な5つのシステムを紹介します。


3-1 デジタルピッキングシステム

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デジタルピッキングシステムは、棚に取り付けられたランプやデジタル表示器が光り、作業者に「どの商品を・どの数量・どの場所から」取るかを示す方式です。視覚的に分かりやすく、初心者でも迷いにくい点が特徴です。


取り間違いを防ぎやすく、同一作業を繰り返す現場で特に効果を発揮します。


3-2 デジタルアソートシステム

デジタルアソートシステム(DAS)

デジタルアソートシステムは、ピッキング後の商品を複数の出荷先へ仕分ける際に、ランプや表示器を使って振り分け場所を案内する仕組みです。EC倉庫や量販店など、仕分け作業が多い現場で採用されるケースが増えています。


複数注文の同時処理が必要な現場で高い効果を発揮します。


3-3 タブレットピッキングシステム

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タブレットピッキングシステムは、タブレットやハンディ端末に表示されるピッキングリストやルート案内に沿って作業を行うタイプです。表示内容を柔軟に変更できるため、商品点数が多い現場でも対応しやすくなります。


指示内容が画面で明確に確認でき、レイアウト変更にも柔軟に対応できます。専用機器が不要なため導入しやすく、中小規模の倉庫でも採用が進んでいます。


倉庫管理システム※1(WMS:Warehouse Management System)との連携もしやすく中小規模の倉庫でも利用されています。


 ※1倉庫管理システムとは:

  倉庫内の「物の流れ」をコンピューターで一元管理し、入荷から出荷までの業務を効率化するシステムです


3-4 ボイスピッキングシステム

ボイスピッキングシステムは、ヘッドセットから流れる音声指示に従って商品を取り出す方式です。両手が自由に使えるため、重量物を扱う現場や、広い倉庫での作業に向いています。

 

視覚に頼らず作業できるため、環境によらず安定した品質で作業できる点が強みです。


3-5 プロジェクションマッピングによるピッキングシステム

プロジェクションピッキングシステムは、棚や作業台に光を投影してピッキング箇所を示す仕組みです。表示内容を柔軟に変更でき、商品配置が頻繁に変わる現場でも対応しやすい方式です。

 

最新技術を活用した次世代型の方式として注目されています。



4.ピッキングシステム導入のメリットとは?


ピッキングシステムを導入することで、倉庫全体の作業効率や出荷品質に大きな改善効果が生まれます。とくに、人手不足が続く物流業界では、作業の標準化とミス防止の両立が重要視されています。


ここでは、代表的な3つのメリットをまとめます。


4-1 作業効率の向上と時間短縮

従来の紙リストを使った作業では、商品を探す時間や歩行距離が多く発生し、生産性が上がりにくいという課題がありました。

 

ピッキングシステムを導入すると、ランプ表示やタブレット指示などに従って作業を進められるため、必要な商品を迷わず見つけられます。

 

結果として、作業スピードが安定し、繁忙期の出荷増にも対応しやすくなります。


4-2 誤出荷の防止と品質の安定化

紙のリストや目視確認に頼る作業では、数量違いや取り違えなどのヒューマンエラーが起こりやすくなります。

 

ピッキングシステムでは、ランプ・音声・バーコードなどで指示や確認ができるため、作業者の習熟度に関係なく、安定した品質を確保しやすくなります。

 

誤出荷が減ることで、顧客満足度の向上やクレーム対応の削減にもつながります。

 

4-3 人材育成コストの削減と属人化の解消

ピッキングシステムは作業内容を視覚的・音声で示すため、初めての作業者でも比較的早く業務を覚えられます。ベテランに依存した運用から脱却しやすくなり、誰が作業しても品質が大きくブレない環境をつくれます。

 

教育にかかる時間やコストを減らしながら、現場全体のスムーズな運用を支える仕組みです。



5.ピッキングシステム導入のデメリット


ピッキングシステムは多くの改善効果が期待できる一方で、導入前に知っておきたい注意点もあります。

 現場にしっかり定着させるためには、費用面や運用面でのハードルについて理解しておくことが重要です。


5-1 導入コストがかかる

システム導入には、ランプやタブレットなどの機器類、サーバーやネットワーク、システム構築費などの初期投資が必要です。特に広い倉庫や、多数の棚に機器を設置する場合は費用が大きくなりがちです。


また、既存の倉庫管理システム(WMS)と連携するために追加の開発が必要になるケースもあり、予算計画を立てる際には注意が必要です。


5-2 現場への定着に時間がかかる

新しいシステムを導入すると、作業者が慣れるまでに一定の時間が必要です。従来の紙リスト中心の作業からデジタルに移行する場合、最初は操作に戸惑いがおこるため、作業手順を見直す必要が出てくることがあります。

 

業務の安定運用までの期間を見越し、教育期間やサポート体制を整えておくことが、スムーズな定着につながります。


5-3 システム障害時のリスクがある

ピッキングシステムは、ネットワークや端末機器が正常に動作することを前提に運用されます。そのため、通信トラブルや機器故障が発生すると、作業が一時的に止まってしまう可能性があります。

障害が繁忙期に重なると、出荷遅延につながるリスクも高まります。


このような問題を避けるためには、バックアップ体制や手動での代替手順を事前に用意しておくことが大切です。



6.自社に合ったピッキングシステムの選び方

 

ピッキングシステムは種類や機能が多く、現場の状況や業務形態によって最適な選択肢が異なります。単に最新のシステムを導入すれば良いわけではなく、自社の倉庫規模や出荷形態、作業員のスキルなどを踏まえて選ぶことが重要です。

ここでは、自社に合ったピッキングシステムを選ぶ際に押さえておきたいポイントを解説します。


6-1 現場の作業形態に合わせて選ぶ

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自社倉庫の作業形態やオーダー特性に応じてシステムを選ぶことが大切です。


多品種少量で頻繁に出荷がある場合は、タブレットピッキングやボイスピッキングなど柔軟性の高いシステムが適しています。一方、同一商品を大量に出荷する場合は、デジタルピッキングやアソートシステムで効率化を図る方が有効です。

 

作業ルートや棚配置に合わせた最適な方式を選ぶことが、効率化の第一歩です。


6-2 導入コストと運用コストを比較する

 初期費用だけでなく、導入後に発生する保守や機器交換などのランニングコストも考慮する必要があります。

高機能なシステムほど投資額が大きくなる傾向がありますが、そのぶん作業効率の向上や誤出荷の削減による効果が見込める場合もあります。


費用ばかりに目を向けるのではなく、 長期的なコスト削減につながるかどうかを判断基準にすると、失敗のない選定がしやすくなります。


6-3 将来の拡張性やシステム連携を確認する

物流業務は、取り扱う商品の増加や出荷形態の変化によって、年々内容が変わっていきます。そのため、導入するピッキングシステムが将来の拡張に対応できるかどうかも重要なポイントになります。


クラウド対応、モジュール追加、WMSとのデータ連携など、柔軟に拡張できるシステムであれば、長期的に安定した運用が期待できます。


また、複数拠点での運用を見据えている場合は、拠点間でデータ共有がしやすい仕組みかどうかも事前に確認しておくと安心です。



7.導入事例・活用シーン(増量版)


ピッキングシステムは幅広い業種で導入が進んでおり、それぞれの現場で異なる課題を解決する役割を果たしています。

 

ここでは、代表的な業種別に、どのようにシステムが活用されているのかを詳しく紹介します。


7-1 食品・日用品を扱う物流センター

食品や日用品の倉庫では、取り扱う商品の種類が多いだけでなく、賞味期限やロット管理が求められるため、作業の正確性が特に重要になります。担当者が商品を探す時間が増えると作業が滞りやすくなり、繁忙期では出荷遅延のリスクも高まります。

 

ピッキングシステムを導入すると、棚のランプ表示やタブレット指示によって必要な商品をすぐに見つけられるため、作業スピードが安定しやすくなります。また、作業手順が明確になることで、取り違えや数量間違いの防止にも役立ち、食品ならではの厳しい品質管理をサポートできます。


7-2 EC倉庫や通販物流

ECの物流センターでは、小口の注文が集中するタイミングや、大量の注文が一度に流れ込むセール時期など、作業量の増減が激しいという特徴があります。従来の紙リストでは変動に対応しにくく、作業者の負担も増えがちです。

 

ピッキングシステムを活用することで、注文情報をリアルタイムに処理し、指示内容をタブレットやランプに即時反映できます。バッチピッキングやアソートシステムと組み合わせることで、多数の注文を効率良く処理できる体制も構築でき、繁忙期に強い倉庫運営が可能になります。


7-3 電機・電子部品の物流現場

電機・電子部品の物流現場では、数百から数千に及ぶ細かな部品を扱うため、ピッキングの正確性が作業品質と安全性に直結します。部品のサイズが小さいほど取り違えが起こりやすく、一つのミスが大きな品質問題につながることもあります。

 

デジタルピッキングシステムを導入すれば、部品の保管場所が一目で分かり、必要な数量も即座に確認できます。作業者の経験に依存しない運用ができるため、新人でも高い精度を維持でき、重要な部品を扱う現場での信頼性向上に寄与します。また、作業履歴が自動的に記録されるため、トレーサビリティの確保にも有効です。


7-4 医療・医薬品関連施設

医療や医薬品を扱う現場では、誤出荷や数量間違いによって安全性が損なわれる可能性があるため、非医療分野以上に高い精度が求められます。品目の種類が多く、保管条件も厳しいことから、手作業だけではミスの発生を完全に防ぐことは困難です。

 

ピッキングシステムは、視覚や音声を使って作業手順を明確に示すため、誰が作業しても一定レベルの品質を確保しやすくなります。取り扱い品目の多さに左右されずに高い精度を保てる点から、医療現場に適した運用体制を築く際の大きな支えとなります。また、作業データの自動記録により、監査や品質確認がしやすくなるという利点もあります。



8.導入までの流れ

ピッキングシステムの導入では、機器を取り付けるだけでは十分な効果を得られません。現場の課題を整理し、適切な方式や設備を選び、運用ルールを整えたうえで導入することが大切です。

 

ここでは、導入がどのように進むのかを段階的に説明します。


8-1 現状の作業内容や課題を整理する

導入の第一歩は、現在のピッキング作業を見直し、どのような課題があるかを把握することです。歩行距離が長すぎるのか、誤出荷が多いのか、人材育成に時間がかかるのかなど、改善したいポイントによって最適なシステムは変わります。

 

現場の動線、棚の配置、作業手順を細かく確認することで、どの部分をデジタル化すれば改善効果が高いのかが見えてきます。


8-2 倉庫レイアウトや作業ルールを最適化する

ピッキングシステムを導入する前に、棚の配置や動線を見直すことで、より効果的な運用が可能になります。棚が不規則に並んでいたり、保管場所のルールが曖昧だったりすると、どれほど優れたシステムを導入しても無駄な移動が発生してしまいます。

 

システムを最大限に活かすためには、倉庫レイアウトと作業ルールの整理が欠かせません。


8-3 システムの選定と連携方式を決める

現場の状況を踏まえたうえで、どのピッキングシステムを導入するかを選びます。デジタルピッキング、タブレットピッキング、ボイスピッキングなど、それぞれ長所が異なるため、課題に合った方式を選ぶことが重要です。

 

あわせて、倉庫管理システム(WMS)とどのように連携するか、どの程度のカスタマイズが必要かを確認することで、導入後の運用をスムーズに進められます。


8-4 テスト導入で運用を確認する

新しいシステムは、いきなり全体へ導入するのではなく、一部のエリアや作業工程で試験的に運用するのが一般的です。テスト導入によって、作業者がどこで迷いやすいか、棚配置に問題がないか、移動距離が適切かなど、改善点を具体的に把握できます。

 

必要に応じて設定変更やレイアウト調整を加え、本格導入に備えます。


8-5 本稼働と運用ルールの定着化

テストで改善点を解消したら、本格的にシステムを稼働させます。本稼働後は、作業者に対する教育や、日々の改善活動を継続することが重要です。一定期間運用を続けることで、より精度の高い作業手順が確立され、現場全体の生産性向上につながります。