
デジタルピッキングシステムで仕分け作業の効率化を実現
公開日:
2025年11月16日
物流業界では、効率化やコスト削減のためにデジタル技術の活用が重要になっています。特に、倉庫業務の中でもピッキングや仕分け作業の効率化は、生産性向上の鍵を握ります。
近年、少子化や労働力不足の影響で、限られたスタッフが複数の作業を兼務するケースが増え、効率的な運用が求められています。その中で注目されているのが「デジタルピッキングシステム」です。このシステムを導入することで、仕分け作業の精度やスピードが向上し、倉庫業務の効率化に大きく貢献します。
今回は、デジタルピッキングシステムがもたらす仕分け作業の効率化についてご紹介します。
目次
1.現場作業の効率化が求められる理由
物流業界では、迅速かつ正確な配送が求められる中、倉庫内作業の効率化が重要な課題となっています。特に、ピッキングや仕分け作業は人的依存度が高く、作業の遅れやミスが発生すると、業務全体の生産性に影響を及ぼします。さらに、労働力不足や働き方改革の影響で、少ない人員で高いパフォーマンス を発揮できる環境づくりが求められています。そのため、多くの企業がデジタル技術を活用し、業務の効率化に取り組んでいます。
1-1 効率化の必要性と業界全体のトレンド
近年、EC市場の拡大や消費者のニーズの多様化により、物流業務の負担が増大しています。特に、短納期対応や多品種・小ロット配送の増加により、倉庫作業のスピードと正確性がこれまで以上に重要視されています。しかし、従来の手作業による仕分けやピッキングでは、人手不足の中で対応しきれないケースが増えてきました。
こうした状況を受け、業界全体では自動化やデジタル化の導入が加速しています。デジタルピッキングシステムをはじめとする最新技術を活用することで、作業負担の軽減とミスの削減を実現し、よりスムーズな業務運営が可能になります。今後も、こうした効率化の流れはさらに進んでいくと考えられます。

2.仕分け作業における主な課題
多くのピッキング現場では、依然として紙のリスト(ピッキングリスト)や伝票を使った作業が行われています。単純な仕分けであれば発注書や納品書を参考にすれば済みますが、配送先が複数あったり、取り扱う商品が多岐にわたったりする場合は、ピッキングリストの作成が必要です。しかし、このリストを作成するだけでも手間とコストがかかります。
さらに、従来の紙ベースのピッキング作業にはさまざまなデメリットがあり、作業効率の向上を妨げる要因となっています。ここでは、代表的な課題を見ていきましょう。
2-1 作業ミスから発生する配送間違い
紙のリストを使った仕分け作業では、記載された商品を一つひとつ確認しながらピッキングし、コンテナに入れてはチェックを繰り返します。しかし、この方法では見間違いや記入ミスが発生しやすく、誤配送につながる可能性があります。
特に、商品数が多い場合や納期が迫っている状況では、焦りがミスを誘発し、結果的に必要な商品が含まれていなかったり、別の配送先へ送られてしまったりするリスクが高まります。このようなミスは、顧客からの信頼低下を招くだけでなく、再配送によるコスト増加にもつながります。

また、日本語に不慣れな外国人スタッフが作業を行う場合、リストの内容を正しく理解できないことでピッキングが難しくなるケースもあります。
2-2 目的の商品を見つけるまでのタイムロス
広い倉庫内で目的の商品を探すのは容易ではありません。倉庫のレイアウトや商品の配置を熟知しているベテラン作業員と比べ、初心者や経験の浅いスタッフは、商品がある棚までの移動や、実際に目的の商品を見つけるまでに時間がかかってしまいます。
さらに、商品名ではなく、商品番号や型番で管理されている場合、似たような番号を見間違えてしまうこともあり、ミスの発生リスクが高まります。このような時間ロスや誤認識は、業務全体の効率を低下させる要因となります。
2-3 リアルタイムで在庫管理ができない
紙のリストを用いた手作業のピッキングでは、作業中の在庫変動をリアルタイムで把握することが困難です。ピッキング作業が完了した後にリストや伝票をもとに在庫数を更新しますが、その過程でミスがあれば、正しい在庫数が反映されず、欠品や過剰在庫の原因になります。
また、仮に在庫数が合致していたとしても、ピッキングミスが発生していた場合、そのエラーを即座に特定するのは難しく、トラブルが発生するまで気づかないこともあります。そのため、ヒューマンエラーを前提とした業務改善が求められており、より正確で効率的な仕分け作業の仕組みを導入する必要があります。
3.デジタルピッキングシステム導入による仕分け効果
手作業によるピッキング作業では、どれほど注意を払ってもヒューマンエラーを完全にゼロにすることはできません。
作業効率を向上させるために、倉庫内のロケーションや商品の配置を最適化し、リストや伝票の運用を工夫することで一定の改善は可能ですが、根本的な解決には限界があります。一方で、デジタルピッキングシステムを導入することで、作業スピードの向上とミスの削減が期待でき、より正確かつ効率的な仕分け作業を実現できます。
3-1 作業ミス防止と作業効率の向上
デジタルピッキングシステムでは、デジタル表示器を活用することで、視覚的に分かりやすい形でピッキング作業を行うことが可能です。表示器に示された情報をもとに、指示通りに商品をピッキングするだけでよいため、初心者や経験の浅い作業者でも、熟練スタッフとほぼ同等の精度で作業を行えます。

また、紙のリストを見ながら作業する必要がなく、両手が自由に使えるため、作業スピードの向上にもつながります。加えて、類似した商品や配送先を誤認するリスクも軽減され、結果としてミスの大幅な削減と作業効率の向上が実現できます。
3-2 人員削減によるコスト削減
デジタルピッキングシステムの導入により、熟練度に関係なく安定した品質で作業ができるようになれば、一人当たりの作業量が増加し、全体の作業時間の短縮が可能となります。その結果、必要なスタッフの数を減らし、人件費の削減にもつながります。
また、作業の手順がシンプルになることで、新規スタッフの研修期間も短縮され、作業の定着率向上にも貢献します。安定した人員体制の確保とスキルの標準化により、長期的なコスト削減効果も期待できるでしょう。
3-3 データ連動によりリアルタイムな在庫管理が可能
デジタルピッキングシステムは、作業の進捗と在庫状況をリアルタイムで管理できる点も大きなメリットです。ピッキング作業が完了すると、即座にデータがシステムに反映され、最新の在庫状況を正確に把握することが可能になります。
また、作業の進行状況も可視化されるため、管理者はスタッフへの指示を適切に行うことができ、業務の最適化が進みます。在庫の過不足や作業の遅れを事前に察知できるため、トラブルの発生を未然に防ぐことができます。
4.デジタルピッキングシステム導入の注意点
デジタルピッキングシステムを導入する際には、いくつかの重要なポイントを事前に検討する必要があります。最適なシステムを選択し、円滑に運用するために、特に注意すべき点を紹介します。
4-1 導入コストとシステム規模
デジタルピッキングシステムの最大の課題は、初期導入費用が高額となる点です。システムを導入するためには、デジタル表示器の設置や管理システムの構築が必要となり、その規模に応じたコストが発生します。
また、デジタル表示器には有線タイプと無線タイプがあり、それぞれの特性に応じた設計が求められます。現在の倉庫レイアウトをそのまま活用するのか、新たに作業スペースを確保するのかといった点も、慎重に検討する必要があります。
4-2 現場に合わせたシステムの構築
デジタルピッキングシステムには、主に「トータルピッキング(デジタルアソートシステム/DAS)」と「シングルピッキング(摘み取り式)」の2種類があり、それぞれ得意とす る作業が異なります。
・トータルピッキング(DAS/種まき式)
先に複数の商品をまとめてピッキングし、荷さばきエリアで配送先ごとに仕分けする方式。商品アイテム数が少ない場合に適している。
・シングルピッキング(摘み取り式)
一つの配送先ごとに必要な商品をピッキングする方式。商品アイテム数が多い場合に適している。
導入を検討する際は、現在の業務内容や仕分け方法に適したシステムを選択することが重要です。
4-3 システム運用者の確保とトラブル時の対応策
デジタルピッキングシステムを円滑に運用するためには、システムの管理・運用を担当するスタッフを確保する必要があります。適切な教育やトレーニングを行い、スムーズにシステムを運用できる体制を整えることが重要です。
また、システム障害が発生した際には、作業が完全にストップしてしまう可能性があります。そのため、トラブル時の対応マニュアルを事前に整備し、万が一の事態にも迅速に対応できる仕組みを構築しておくことが不可欠です。
5.デジタルピッキングシステム導入の流れ
デジタルピッキングシステムの導入は、計画的に進めることでスムーズな運用を実現できます。現場の課題を的確に把握し、最適なソリューションを選定したうえで、段階的に導入を進めることが成功の鍵となります。以下に、導入の一般的な流れを紹介します。
5-1 事前調査と現状分析
まず、現場の作業フローや倉庫レイアウト、現在のピッキング方法を詳細に調査し、課題を洗い出します。作業効率やヒューマンエラーの発生率、作業時間のデータなどを分析し、システム導入によってどのような改善が期待できるのかを明確にします。
また、現場スタッフの作業習熟度や業務負荷も考慮し、単なるデジタル化ではなく、実際の運用に即した最適なシステム設計を行うための基礎資料を作成します。
5-2 最適なソリューションの選定とカスタマイズ
ユーザー様の要望を十分にヒアリングしたうえで、最適なデジタルピッキング方式を提案します。トータルピッキング(DAS)とシングルピッキングのどちらが適しているか、また有線・無線のデジタル表示器の選択など、運用に最適な構成を検討します。
この段階では、単にユーザー様のご要望をそのまま反映するのではなく、業務効率向上の観点から、改善提案を交えながらシステムをカスタマイズすることが重要です。導入後の運用イメージを具体化し、現場に適した最適なソリューションを構築します。
5-3 スケジュールと導入計画の策定
導入を成功させるためには、事前に綿密なスケジュールを策定し、段階的な移行計画を立てることが重要です。プロジェクトをマネジメントする専門スタッフがユーザー様と打ち合わせを行い、導入までのロードマップを作成します。
この計画には、システムの設置作業、スタッフ教育の実施、本稼働前のテスト運用など、各フェーズで必要となるタスクとそのスケジュールを明確にします。現場の業務に支障をきたさないよう、段階的な導入を前提とした計画を立てることがポイントです。

5-4 導入前のスタッフ教育と試運転
システムの導入後、スムーズに稼働させるためには、現場スタッフの教育が不可欠です。専任のシステムエンジニアが現場に立ち会い、スタッフへの操作説明を実施します。実際の作業環境で試運転を 行いながら、システムの動作確認やスタッフの理解度をチェックし、必要に応じて追加の指導を行います。
また、本稼働後にトラブルが発生した際の対応方法についても事前に周知し、問題発生時に迅速に対応できる体制を整えます。試運転の段階で現場のフィードバックを反映し、より実践的な運用ができるよう調整を行うことが重要です。
6.導入後の運用とメンテナンス

デジタルピッキングシステムは、導入して終わりではなく、安定した稼働と継続的な改善が求められます。システムの運用を最適化し、最大限の効果を発揮させるためには、適切な保守体制の構築やデータ活用による継続的な改善が不可欠です。ここでは、導入後の運用とメンテナンスの重要なポイントを紹介します。
6-1 稼働後のトラブル対応と保守体制
システム稼働後に発生する 可能性のあるトラブルに迅速に対応できるよう、保守サポート体制を整えることが重要です。当社では、お客様の運用状況に合わせた保守サポートプランをご提案し、締結後はご契約内容に基づき適切なサポートを提供します。
システムの安定稼働を維持し、業務に支障をきたさないよう、適切な保守体制を整えることが運用成功のカギとなります。
6-2 データのフィードバックと継続的改善
デジタルピッキングシステムの導入によって得られるデータを活用し、作業の最適化を図ることができます。システムが記録するピッキング履歴や作業時間、エラー発生率などのデータを分析することで、さらなる業務改善のヒントを得ることが可能です。
